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ヒモ男・翔ちゃんには、男の“可愛い”が全部のせ!<ドラマ『ヒモメン』レビュー>

7月にスタートし、8月4日(土)に第2話が放送された土曜ナイトドラマ『ヒモメン』(テレビ朝日系、毎週土曜日23時15分~)。

窪田正孝演じる主人公・翔ちゃんに恋人と“別れなければならない”危機が訪れた第2話について、小劇場特化型メディア「ゲキオシ!」編集長で、ブログでの独自のドラマレビューも人気を集めるライター・横川良明さんに寄稿してもらいました。

©テレビ朝日

「男の可愛いところってどこだと思う?」って自分に問いかけてみる。

したら、まあいろいろ出てくるわけですよ。たとえば、一生懸命なところとか。ヤキモチやいてムキになってるところとか。ちょっとおバカでみっともないところとか。

あれ? そう思うと、意外と翔(窪田正孝)って愛せるやつなんじゃないかと思えてきて、その思考が本気で怖い。

 

◆男はおバカでみっともないくらいが可愛い

今回のドラマ『ヒモメン』も、しょっぱなから“翔ちゃん”こと主人公・碑文谷翔(窪田正孝)は清々しいくらいのクズっぷり。

©テレビ朝日

突然、恋人の春日ゆり子(川口春奈)を結婚式場に連れてきたかと思ったら、目当てはカップル限定の無料試食会……。ないわー、さすがにこれはないわー。野球で言ったら暴投レベル。もしゆり子がクロマティだったら確実に大乱闘とか起きてる。

にもかかわらず、クズな翔ちゃんを憎めないのは、ひとえに翔ちゃんが男の“可愛い”をフル装備しているから。

まず翔ちゃんは、おバカでみっともない。

翔ちゃんをなんとか更生させようと、先輩看護師の聡子(佐藤仁美)の力を借りることにしたゆり子。ところが、アポなしで突撃訪問してきた聡子の前に現れたのは、髪型はオールバック、目力もキリッとした“よそゆき”用の翔ちゃん。

ネットトレーダーと詐称して、白々しい小芝居まで披露する。どう考えてもイタい。実家の押し入れから小学生のときに描いてた4コマ漫画が突如発掘されたときくらい恥ずかしい。

でも、その嘘が100%バレバレなところが、何か可愛い。株取引っていったらニューヨークくらいしか出てこない翔ちゃんのうっすい金融知識が、決して悪い人ではない感を演出していて、みっともないけど何か許せちゃう。

翔ちゃんは決してゆり子を金ヅルとして見ているわけではなく、ちゃんと愛してくれているのがわかるから、つい財布から万札をホイホイ出しちゃうのである。

 

◆ヤキモチをやいている男の顔ほど可愛いものはない

その証拠が、ゆり子が看護師として働く病院の医師・池目先生(勝地涼)に対する翔ちゃんの態度だ。

©テレビ朝日

男性を仕事と年収で判断するゆり子の姉・桜子(片瀬那奈)。もし翔ちゃんと付き合っていることがバレたら、絶対に別れさせられる!…ということで、いきなり自宅にやってきた桜子の前で急きょ池目先生に翔ちゃんのフリをしてもらうことに。

ゆり子に気がある池目先生にとっては千載一遇のチャンス。ここぞとばかりにドヤ顔でゆり子の肩に腕をまわす。そのときの翔ちゃんの顔! 池目先生をガン見して、「僕はIT企業の社長をしています!」と謎の対抗意識を燃やすところを見たら、「あれ……翔ちゃんが…ヤキモチやいてる!」と心の中でリオのサンバが始まったわ。

しかしそんな嘘、通用するはずもなく、最終的には無職であることを告白。池目先生の前で小さくなってる翔ちゃんが可愛すぎて、つい財布からまた万札をホイホイ出しちゃう。

 

◆自分のために一生懸命になってくれる男の可愛さに悶絶!

©テレビ朝日

そんなダメなところだらけだった今回の翔ちゃん。冷静に考えなくたって、彼氏にするには最低ランク。Amazonに出品したら、間違いなくレビューは全部星ひとつだ。でもたとえみんなが星ひとつをつけようと、「私にとっては星5つなの!!」と声を大にして言いたくなるのが、恋というもの。なぜなら、翔ちゃんはゆり子に対してだけは一生懸命だから。

翔ちゃんがヒモであることを知った姉・桜子は案の定交際に大反対。結婚式を挙げるのに必要な128万7000円を3日以内に用意できなければ、ゆり子とは別れてもらうと叩きつける。

©テレビ朝日

無職の翔ちゃんにとって、あまりに無理難題。でも、ここからの起死回生術が翔ちゃんらしくて、心が温かくなる。

ゆり子と一緒にいるためなら、街を駆け回り、地べたを這うこともいとわない。その一生懸命さに、うっかり財布から万札じゃなくクレジットカードごと渡してしまいそうで、心のレフェリーが待ったをかける。やばいわ、僕、絶対将来振り込め詐欺とか引っかかるわ。

そう、翔ちゃんは基本的にだらしないんだけど、ゆり子に関しては一生懸命なのだ。あとは、その懸命さのベクトルを労働にさえ向けてくれれば事態はまるくおさまるわけだけど、そんなのツッコむだけ野暮な話。だって、もはや働かないことが、翔ちゃんのチャーミングポイントなのだから。

 

◆キャストのコミカルな演技と制作陣のさり気ないアイデアが光る!

キャストもそれぞれコミカルな演技でドラマを盛り上げる。

よそゆき用の翔ちゃんと普段の翔ちゃんで立ち方から声の出し方まで自在に演じ分ける窪田正孝は正真正銘のカメレオン俳優だし、ゆり子は決して翔ちゃんに常に甘いわけではなく、怒るところはビシッと怒るので、視聴者もストレスがたまらない。

©テレビ朝日

その怒っているときの川口春奈が“天性”ともいえるチャーミングさだから、どんなにキツい言葉を乱射してもトゲがなく、むしろどこか微笑ましい気持ちに。勝地涼のジェントルに見えて根っからのクズキャラはますますパワーアップして、専用の画面効果まで出る始末。この池目先生、相当な名物キャラになりそうな予感。

さらに、何気なく放り込まれるネタが結末に向けての伏線になっているところも気が利いている。

翔ちゃんが苦しまぎれについた「翔対夢」という社名が余興ゲストを呼ぶための掛け声になっているところはもちろん、競輪の戦利品として持ち帰ってきた駄菓子の飴を縛るラッピング紐が、最後に婚約指輪として再登場するあたりは、制作チームのアイデア勝ち。ゆるいコメディだけど、随所にこだわりを感じられる点が見ていて楽しい。

ハマったら負けなのがクズ男の罠。でも、「ハマっちゃいけない」と言い聞かせているのはもうハマっている証拠。そういう意味ではもう僕もすっかりクズな翔ちゃんの魅力にハマっているのかもしれない。<文/横川良明>

※番組情報:土曜ナイトドラマ『ヒモメン
【毎週土曜】午後11:15~深夜0:05、テレビ朝日系24局

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