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上川隆也、約30年の役者人生で「初めてに近い体験」『遺留捜査』と糸村が与えたもの

現場に残された遺留品に注目して事件を解決していく『遺留捜査』シリーズの第5シーズンがいよいよ今夜7月12日(木)からスタートする。

©テレビ朝日

京都を舞台にあらゆる事件解決に挑む特別捜査対策室のなかでも、ひときわ風変わりなのが、おなじみ糸村聡刑事(上川隆也)だ。

第1シリーズから7年という長きに渡って続いている『遺留捜査』。なかでも個性際立つキャラクターである糸村を演じる主演・上川隆也に、糸村に対する本音を語ってもらった。

◆安心できないのにすっと馴染む「糸村」というキャラクター

――久しぶりの『遺留捜査』の現場はいかがですか?

「現場ですか?セットに冷房が入りました。 キャストの間では、今回一番大きなトピックです。これでなんとか京都の夏を乗り切れそうです(笑)。

演技という点については、不思議なんですけれど、役に入る際にまったく準備がいらないのが糸村なんです。『明日から糸村です』『はい』それで、問題がない。

でも同時に、糸村というキャラクターにおいて、僕自身がいつも安心して臨んでいないところもあります。何をするかわからない人ですし、ストーリーのなかでしか彼が何をするか推し量れない。その現場に行くまでわからない事が多分にあるんです。だからこそ演じていても毎シーン新鮮ですし、驚きや発見が絶えないキャラクターなんです。

常に変化する作品形態と、予測不能な糸村のキャラクターが僕を安心させてくれない。7年やってきていますが、飽きずに新鮮に取り組んでいます」

◆役者としての経験が自分をつくる

©テレビ朝日

――7年のなかで変化は感じていますか?

「僕自身が、変わっていないわけはない。だけど、もともと日常生活にあまり大きな刺激を必要としない性質(たち)なんです。そのせいか、僕の経験や見識は、役から受け取るものが圧倒的に大きい。だから7年前と単純に比較するならば、役者としての人生、出会ってきたキャラクターが今の僕を作ってきているような気がします。

今回は、直前に(ドラマの役柄を通して)執事の知識や立ち振る舞いを手に入れた僕が、今年の糸村を演じる。去年とはきっと選択肢の幅も違っているでしょうし、役の数だけ僕も糸村も変わってきたと言えると思います。

幸いにしてバラエティに富んだ役柄に出会う機会が数多くあって、得られるものもあれば、感じられることもある。僕自身がのんべんだらりとしていても、役者としての僕は少しずつ重ねられる何かがある。

それは芝居に飽きずにいられることの大きな理由のひとつ。役者を続けてまもなく30年になりますが、幸せな境遇にいると実感しています」

◆人の想いを代弁できる 役者として初めて感じた芝居の意義

©テレビ朝日

――糸村を演じてきたからこそ得たものや感じたものはありますか?

「『遺留捜査』の第1シーズンが始まったのが2011年。第1話から第2話を撮影している頃に、東日本大震災が起こりました。撮影中の一時期、夜は電気がつかない、現場に行っても食事があるかどうかわからない、という状況で撮影が行われていました。

同時に、いろいろな方の膨大な遺品が日本に溢れ、テレビでも繰り返し報道されていました。そんな環境のさなか、『人の遺した何かにこだわっている男・糸村』に出会えたことは、何かのめぐりあわせと言うか、演じる意味がある役なんだと感じられたんです。

あのとき、物理的にも精神的にも傷を負ってしまった方が大勢いらっしゃった、その人たちの想いを代弁する『何か』がこの作品にはあるんじゃないかと思えた。だからこそ、僕は演じる意味や意義が見出せた。

その実、深い思惑もなく、とにかく遮二無二演じただけでしたけれど、『役柄に意義を見出せる』と感じたのは、初めてに近い体験でもありました。それは、とても幸せなことだったと思いますし、演者として演じること、『エンタテイメントをお届けする』ということとは、また違ったやりがいだったようにも思うんです。それは糸村と『遺留捜査』という作品が与えてくれた、とても大きな僕の財産だと思っています」

◆ひとつの役柄を演じ続ける面白さ

©テレビ朝日

――シリーズで同じ役を長く演じることの面白さは、舞台で同じ役を再演するのとは違う面白さがあるのではないかと思うのですがいかがですか?

「舞台で同じ役を演じるっていうことは、行って戻っての繰り返しなんです。その役が通っている道は同じ。通学路みたいなものなんです。出発点があって目的地がある。幕が下りると、また出発点に戻る。

でも通学路って、最初は律儀に通うだけだったかもしれないけど、そのうち道草をして路地や店やせせらぎをみつけたり、回数を重ねて辿ることでいろいろな発見が出来る様になる。同じように見えても、風景が変わる。その道程をどう楽しむかという余地、幅やバリエーションが増えていくんです。それが、舞台で同じ役を演じることだといって良いんじゃないでしょうか。

それに比べて、テレビシリーズで同じ役を演じるときには、追体験、再体験はもう出来ない。キャラクターが次に何を目のあたりにするのか、いつも新鮮に待っていられる。その反面、今までやってきたこともきちんとふまえてなければいけない。これが舞台とは違う面白味かと思います。セリフや段取りの繰り返しではなく、工夫しながら自分のなかで醸し、育む工程を面白味と感じています。

シリーズを重ねる事は、だるま落としの一段一段よろしく、落とさないよう縦に1個積む作業に似ている。やればやるほど、舞台は幅が広がり、ドラマのシリーズは『かさ』を増していく。だからこそ、それぞれ作品が揺るぎないものになっていくんじゃないかと……って、演劇学校の講義みたいになってしまいました(笑)」

◆動き続ける糸村でありたい

©テレビ朝日

――糸村として「こうなりたい」というものはありますか?

「作品自体はこれまで同様に楽しんでいただければと思いますけれども、糸村に関しては、安心していただきたくないという想いがあります。僕自身も、演じるうえでは不安定でありたいと思っています。

安定しているものって、実は動かしづらい。安定感はあるんでしょうけれど、外的要因はあまり受け入れられなくなる。不安定であれば、変化も起こしやすい。だからこそ、糸村は安定しない状態で放っておきたいと思っているんです。

僕は、第5シーズンのなかでも糸村をいろいろと動かしたい。自分は飽き性だと自認しているんですが、糸村はその僕がこれからも飽きずに付き合っていけそうな、何をするかわからないキャラクターですから」

役者として『遺留捜査』という作品から受けた影響、そして糸村との関係性を、ひとことひとこと、とても丁寧に話す姿が印象的だった今回のインタビュー。

今まで7年積み上げてきたものに、第5シーズンでどれだけ新たな魅力が積み上げられていくのだろうか。第1話から注目したい。

※番組情報:木曜ミステリー『遺留捜査
2018年7月12日(木)スタート!【毎週木曜 午後8:00~8:54放送】※初回は2時間スペシャル(午後8:00~9:48)、テレビ朝日系24局

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