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幸運なファン30名も参加!TOYOTA GAZOO Racing「WRCシーズン報告会」レポート

11月17日~19日に開催されたラリー・オーストラリアでシーズン最終戦を迎えたWRC(FIA世界ラリー選手権)。

今季はトヨタが18年振りのWRC復帰を果たし、シーズン2勝という望外な結果を残したが、じつは来季のシーズン開幕(ラリー・モンテカルロ/2018年1月25日~28日)までのオフ期間はたったの9週間しかない。

すでに2018年シーズンへの戦いはスタートしているのである。

そんななか、最終戦翌週の11月23日(木)、TOYOTA GAZOO RacingのWRCチームメンバーが東京にやってきて「WRCシーズン報告会」を開催した。

開催場所はトヨタ自動車の東京本社。さらにこの日は勤労感謝の日で祝日だったこともあり、事前にホームページで募集した30名のファンが報告会会場に招待された。応募人数は1000人を超えたという。

当選したファンを見ると、親子連れファンあり、女性ファンあり、見るからにラリー好きな男性ファンありと実に幅広く、市販車をベースにしたラリーの魅力がモータースポーツマニア以外にも浸透し始めていることが感じられた。

そして、通常の報道陣向け報告会や発表会と違って、今回はファンを大事にした心憎い演出があった。

それは、トミ・マキネン代表以下、ヤリ‐マティ・ラトバラ選手やエサペッカ・ラッピ選手などチームメンバーが壇上に上がる際、ファンとハイタッチをして入場するというもの。WRCはもともとファンとの距離が近いカテゴリーだが、ファンからすればドライバーとのハイタッチは強く心に残る出来事だ。

TOYOTA GAZOO Racingは他カテゴリーでもファン向け施策を色々と行っているが、今回の演出はファンにとって最高のプレゼントだったと感じられた(ラトバラ選手はファンとの集合写真も撮っており、今回当選した30名は本当に幸運な体験ができていたようだ)。

肝心の報告会では、2018年1月1日からトヨタ自動車副社長への就任が決定している友山茂樹トヨタ自動車専務兼TOYOTA GAZOO Racingカンパニープレジデントが最初に壇上に立ち、18年振りのWRC参戦までの経緯や、今シーズンを終え来季に向けた気持ちなどを語った。

なかでも、日本のトヨタ、ドイツのTMG(エンジン開発)、フィンランドのWRCファクトリー(車体開発)の体制作りまでの思い出話は、風通しの良い組織作りの難しさや、全社スタッフが一丸となって目標に同じ熱量で向かっていく過程などが語られており、モータースポーツファンならずとも興味を持てる内容だった。

その後WRCチームメンバーが紹介され、それぞれがシーズンを振り返ったり、来季に向けた目標などを語り、サプライズで2018年からトヨタ入りすることが決定しているオット・タナック選手が突然紹介されたりと、1時間強の報告会はあっという間に過ぎ去った。

報告会後はテレビメディアなどに向けたドライバーの個別インタビューがあり、そのなかで感じられたのは、ラトバラ選手の人間的な優しさや純粋さだった。

今回、トヨタ自動車東京本社でのWRCシーズン報告会の前日に名古屋へ行き、各所への挨拶などをするなか、メンバーたちはトヨタ産業技術記念館へ立ち寄った。

実はラトバラ選手のクルマ好き&トヨタ好きは有名だったので、案内役を務めたトヨタ関係者たちは間違いなく時間がかかると予想されたトヨタ博物館(自動車を中心に展示)を避け、トヨタ産業技術記念会館(機織などを含めたモノ作りを視点にした展示)を選択したそうなのだが、こちらでも自動織機などを熱心に見学し、スケジュールがかなり切迫したそうだ。

また、インタビュー終わりにシーズン中の婚約を発表したマイサ・トイプさんとの関係について「結婚おめでとう」と言うと、「いや、まだ婚約で結婚じゃないんだよ。もちろん、結婚するつもりだし、早く結婚したいね」と自身のスマホにある婚約者の写真を見せてくれた。

周囲からラトバラ選手がぞっこんだとは聞いていたが、婚約者について説明する姿は本当に嬉しそうで、彼の誠実さがよく伝わり、ラトバラ選手にファンが多い理由がよくわかった(編集部注:ちなみに婚約者のトイプさんは、『トゥルーTV』というテレビ番組の司会者などで有名な26歳の女性タレントである)。

Parisuhteessa menee liian hyvin niin päätettiin lähteä kaatosateeseen patikoimaan 👫❤️

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ラトバラ選手の次にインタビュー取材へやってきたマキネン代表は、インタビューの最後にチーム設立時から今シーズンを一緒に戦ったユホ・ハンニネン選手について、「ユホ(ハンニネン)はチーム設立時からマシン開発を託した。長期に渡るテストで、そのまま2017年シーズンのレギュラードライバーを任せたのも、2018年シーズンに向けて一貫性を持ったデータが必要だったからだ。ユホのデータがあり、そこからヤリ‐マティ(ラトバラ)、そして今後オット(タナック)の経験が加わる。そうすることで、さらに強い解析が出来るようになる。ユホ(ハンニネン)に感謝しているよ」とベテランの仕事ぶりを賞賛した。

また、普段はジョークなどは言わないマキネン代表だが、この日のインタビューでは、今シーズン開幕戦でいきなりラトバラ選手が2位表彰台へ上がったときの表彰式で起きたことの質問に対して真っ赤な顔になって対応する場面があった。

このとき、表彰をする場所にラリーマシンを運ぶ運転役はマキネン代表が行ったのだが、その台座に上がったときにマシンがエンストしたのだ。

周囲にいたファンやメディア関係者は、それを伝説のドライバーがわざと盛り上げるためにやったと受け止めていたのだが、「あれはワザと狙ってやったんですか?」と質問したところ、顔を真っ赤にして「いやいや、ただのアクシデントだよ!ワザとエンストなんてしないよ」と大笑いし、筆者が「でも、現場にいた多くの人が、伝説のドライバーがエンストはしないだろう。盛り上げるための演出だよと言ってたそうですよ」と伝えると、さらに大笑いして「いやー、あれは狙っても出来ないよ」と、普段のインタビューとは違い非常にリラックスしたムードでそのエピソードを語っていた。

公式の場面では硬い表情が多いマキネン代表だけに、不意を突かれた質問に笑顔で対応したこのリラックスした雰囲気こそがファクトリー内の普段の姿なのだろうと感じられた。

ちなみに、今シーズンいちばん思い出に残るラリーをラトバラ選手・マキネン代表それぞれに聞いたところ、ふたりともラリー・スウェーデンを挙げた。あのラリーの勝利こそが、チームのモチベーションを一気に高め、シーズン最後まで高いレベルで戦い続け、同時に開発スピードも落ちることなく、ワークスチームの一角として周囲の予想や評判以上の結果を残すことができた要因のひとつだったことは間違いないようだ。

©TOYOTA GAZOO Racing

12月に入り、WRCに参戦する各チームは短いクリスマス休暇を経て2018年シーズンに向けたテストを繰り返すことになる。

トヨタはフォード出身のタナック選手という新たなDNAを手にし、彼がチャンピオンチームで培った経験をヤリスWRCの開発にフィードバックすることで、ラトバラ選手の豊富な経験とを重ね合わせ、トヨタはさらに進化し、いよいよチャンピン争いに挑戦していくことになる。

今回の「WRCシーズン報告会」は、普段見ることがないチーム関係者の素の一面などを見ることができた。トヨタだけでなくWRC各チームのこうしたラリー以外の一面がさらに紹介されることで、WRCに興味を持つファンが増えていくに違いない。<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>

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