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【世界ラリー(WRC)】ラリーGB開催!伝統を積み重ねた英国モータースポーツの真髄が楽しめる

FIA世界ラリー選手権(WRC)の2017年シーズン、第12戦ラリー・GB(グレートブリテン)が、イギリス・ウェールズ地方で開催される。

©WRC/無断転載禁止

このラリーの初開催は、1932年。ラリー・モンテカルロ(1911年初開催)に次ぐ伝統を持つラリーだ。長年RAC(ロイヤル・オートモービル・クラブ ※日本ではJAFにあたる)が主催し、RACラリーと呼ばれていたことから、古いWRCファンにはRACラリーという名称のほうが馴染み深い。(※現在の正式名称はウェールズ・ラリーGB)。

このラリー・GBが開催されるのは、ビートルズで有名なリバプールから見て南西に位置するウェールズ地方。

もともとは独立した国家だが、1283年以降グレートブリテンの地方となった。だがその格式は高く、イギリスの最年長王子はプリンス・オブ・ウェールズの称号を持ち、プリンス・オブ・ウェールズはイギリス内において第一王位継承者ということになる(現在のプリンス・オブ・ウェールズはエリザベス女王の長男であるチャールズ皇太子)。

ウェールズ地方は石炭や鉄を多く産出したことから、イギリスにおける重工業の一翼を担った地域であり、ウェールズに程近いマンチェスターなどの重工業都市は、産業革命以降、ウェールズ地方の石炭を多く消費して発展した歴史がある。

©WRC/無断転載禁止

2017年のWRCは、年間13戦。このラリー・GBを入れて残り2戦だ。

昨年まではVWが圧倒的な強さを誇り、このラリーGBの前にはチャンピン争いが終結してしまっていたが、今シーズンはまだ決着していない。

現在、ランキング1位は4年連続世界王者のセバスチャン・オジェ(フォード)の198ポイント。それを同じフォードのオット・タナック(161ポイント)とヒュンダイのティエリー・ヌービル(160ポイント)が追う展開だ。ただ、残り2戦の状態で2位と37ポイント差は大きく、オジェはリタイアなどをしなければ5年連続タイトルを難なく手に入れることができる状態にある。

現在ランキング3位のヌービルは、マシンの速さでは間違いなく今季最速だったにも関わらず、開幕戦ラリー・モンテカルロ、第2戦ラリー・スウェーデン、第10戦ラリー・ドイチェランド、第11戦ラリー・エスパーニャと、ドライバー自身のミスなどで4戦も本来獲得できたはずのポイントを得られなかったことが大きく響いた。

ただし、ヌービル本人は「奇跡の逆転を目指しまだ諦めていない」とラリー・GBに向けたモチベーションは高い。

 

◆トヨタと意外なつながりがあるラリー・GB

日本のトヨタは、エースのヤリ‐マティ・ラトバラ、ユホ・ハンニネン、エサペッカ・ラッピと3台体制で挑むのだが、ここラリー・GBは意外な形でトヨタには応援が多い。

©Hyundai Motorsport/無断転載禁止

というのも、このラリー・GBの各マシンたちが整備などを行うサービスパークは、イギリス国内でトヨタのエンジンを生産している現地工場の敷地内に設置されたからだ。トヨタのWRCエンジンはドイツでWEC(世界耐久選手権)を戦うTMGが開発しているので、直接この工場は関係ないのだが、トヨタに好意的な地域であることは間違いなく、ファンの声援なども多い。

 

◆さまざまな表情を見せるグラベル(未舗装路)ラリーの代表格

さて肝心のラリーだが、ここラリー・GBはグラベル(未舗装路)ラリーのひとつ。

ウェールズ地方の10月下旬はすでに冬の足音が聞こえている状態で、コースには霜が降り、路面はぬかるんだ状態にあることが多い。それでいて森林コースなどが多い高速ラリーのひとつなので、ぬかるんだ路面での高速ラリーはドライバーの腕が重要な要素となる。

©Hyundai Motorsport/無断転載禁止

過去4年は王者オジェが優勝しており最有力候補だが、その前の2011年と2012年はラトバラが勝利をしているので、高速ラリーを得意とするラトバラ向きのコースであり、今季のトヨタはラリー・スウェーデン、ラリー・フィンランドと高速ラリーで勝利していることから、ここラリー・GBは勝利のチャンスがあるコースのひとつだ。

©WRC/無断転載禁止

ラリーは木曜日にSS1が行われ、金曜日にSS2~SS7、土曜日にSS8~SS16、日曜日はSS17~21が行われる。残り2戦ながらも各チームやドライバーたちの意気込みも高く、昨シーズンまでとは大きく様相が違っている。

※セバスチャン・オジェ(フォード)
「たしかに天候に影響されるラリーだね。でも、たとえウエット路面であっても、難しいからこそ楽しめるラリーなんだ。そして、今シーズンの僕にとっては最も重要なラリーになりそうだ」

※ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)
「ここはとても個性的なラリーだ。とくに多少の小石が表面にある路面が滑りやすく、こんなラリー会場は他にない。路面のトラクションが走るごとに悪化するので、どうしても午後はタイムが落ちがちなんだ」

※ヤリ‐マティ・ラトバラ(トヨタ)
「ここは常に雨に降られることを想定しておく必要がある。つまり、霧による視界不良や、滑りやすい路面に準備してコース入りする必要があるってこと。とくに昨年の霧は酷くて対応が難しかった。

でも、それでいてタイムが出せるというか、攻めればそのぶんマシントラクションは得られる高速ラリーでもあるから、ギリギリのところまで攻められるかがポイントになる。滑りやすい路面との戦いだけど、それでもプッシュする必要に迫られるラリーだね」

※マッズ・オストベルグ(フォード)
「たとえ霧にまみれても、すごく美しいラリーなんだ。まさに英国モータースポーツを代表するイベントだね」

※クリス・ミーク(シトロエン)
「これほどの伝統あるラリーは多くない。そして、自然の森林のなかを走り抜ける。すごく滑りやすい路面をね。でも、それいでて高速で攻めることができる。こんなラリーは他にはないね」

果たして、伝統のラリーで勝利するのは誰か? 今週末も目が離せない。<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>

 

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