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【WRC】フォルクスワーゲンがマニュファクチュアラーズタイトル4連覇達成!

10月27日から始まった「ウェールズ・ラリーGB」は、例年より少し早めの開催もあってか、天候はいつもより安定したなか始まった。

注目は、前戦の「RACCラリー」で4年連続王者となったVWのセバスチャン・オジェが、その勢いのまま、ここ「ウェールズ・ラリーGB」でも4年連続優勝を果たすのか、というものだった。ただ、オジェ本人は「ここでマニュファクチュアラーズタイトルを決めたい」とVWのタイトル獲得に徹するつもりであることをラリー前に語っていた。

そしてラリーは、王者オジェとVWの前に意外な伏兵が現れたのだった。

雨に濡れて少々泥状になったグラベル(未舗装路)を前に、28日の金曜日、SS1からSS8までの合計179.06キロを争った。結果、初日トップに立ったのはオジェ(VW)。

2位には、DMACワールドラリーチームのオット・タナク(フォード)が37秒3の差で2位につけた。

エストニア出身のタナクは、1987年生まれの29歳。まだRC1クラスでの優勝はないが、7月に行われたラリー・ポーランドでは、最終日まで総合トップに立ちながらタイヤパンクで初優勝を逃したものの、若手のなかでも注目株。現在はサテライトチームであるDMACワールドラリーチーム所属で、来季はフォードワークスのMスポーツ・ワールドラリーチームから参戦が濃厚な次世代のエースだ。

この初日も、タイヤパンクに見舞われながらも2位となり、このラリーに自信を覗かせた。

「ここのラリーはいつも楽しんでいるよ。今日は良い日でもあり、難しい日でもあった。SSによっては霧も凄かったしね。でも、マシンの感触はすごくいい。明日の作戦はただひとつ。このままプッシュし続けるだけさ」(タナク)

じつはこの日、VWは大きなトラブルに見舞われていた。

オジェと同じVWのヤリ・マティ・ラトバラとアンドレアス・ミケルセンが共に車両のドライブシャフトトラブルに見舞われたのだ。結果、ラトバラがトップから3分43秒6遅れの総合8位。ミケルセンにいたっては、8分58秒6遅れの総合19位と大きく出遅れ、マニュファクチュアラーズタイトルのためのポイント獲得は、王者オジェが頑張るしかなくなってしまったのだった。

「今日は凄く疲れた。でも、良い日のまま終わって良かったよ。これほどリードを保てるとは思っていなかったから。霧で視界が悪いし、路面は滑るし、でも、なんとかマネージメントできた。僕もギヤボックスやドライブシャフトにトラブルがあったけど、走行後の問題発覚で助かった。一方、チームは色々と不運が重なってしまったね。ただ、僕のマシンはチームメートほど悪い状態ではない。明日も無事なまま走りきりたい」(オジェ)

2日目の土曜日、この日SS9からSS16までの合計101.73キロが争われた。このSS9からSS16までは、どのチームにとっても通常とは違う戦いが待っていた。というのは、普段のWRCでは、いくつかのSSごとにメカニックによる整備を受けるサービスという区間があるのだが、この「ウェールズ・ラリーGB」の2日目はサービスがない。

しかも、コースはパンクしやすい高速のグラベル(未舗装路)コースだ。そのため、どの車両も通常は1本だけ積んでいるスペアタイヤをこの日は2本積み、あとはドライバーとコドライバーがすべてのトラブルに対処しなければならない。どのドライバーも攻めたいのはやまやまだが、マシンを壊しては意味がない。その心理的な部分も含めたせめぎ合いが勝負の行方を決める。

そしてこの日、リスクを取って勝負したのが、2位のタナク(フォード)だった。

じつにSS9、12、13、14と4つのステージトップを取り、SS14終了時点で、初日の37秒3差を24秒8差まで12秒5縮めてきた。こうなると王者オジェ(VW)もリスクを取るしかない。SS15でステージトップを取ると、続くSS16もタナクを上回り、その差を33秒8とした。

結果、2日目も1位オジェ、2位タナクの順位は変わらずだが、タイム差は約4秒縮まった。そしてVWの他の2台はラトバラが8位、ミケルセンが14位と少しずつ上位へと上がってきた。

「今日は間違いなく良い一日だったからハッピーだよ。ただ、外側から見ているほど楽な展開ではなかったんだ。なんとかギャップを保ちたいと思っていたから、最後はリスクを取って勝負をした。とにかく1位のまま2日目を終えてよかったよ。なんとか確保しておきたかった30秒のリードも保ったまま最終日を迎えられるしね」(オジェ)

「僕はハッピーだよ。他になんて言えばいい? マシンはいい感じだ。とくに滑りやすくてみんながタイムを落とした2本目でもタイヤがすごくグリップが利いてよかった。ただ、僕が凄く攻めると、オジェもタイムを上げていった。それはどうしようもないだろ? とにかくこの週末はリズムがいい。このまま楽しみたいね」(タナク)

ラリー最終日は、SS17からSS22までの合計52.08キロ。30秒のリードがあるオジェは、とにかくタナクのタイムを見ながらの守りの走行に徹した。すべてのSSでタナクがトップを奪ったものの、30秒以上のリードを脅かすまでは至らず、総合結果は1位オジェ(VW)、2位に10秒2差でタナク(フォード)がつけた。

3位、4位、6位にはマニュファクチュアラーズ2位のヒュンダイが入賞しポイントを稼いだが、VWのマニュファクチュアラーズタイトル4連覇を阻むことはできなかった。

「ハンヌ・ミッコラ(フィンランド/1983年王者)とペター・ソルベルグ(ノルウェー/2003年王者)に並ぶ4回目の『ウェールズ・ラリーGB』勝利を挙げられるなんて信じられないよ。ふたりはWRCの巨人ともいえる偉大な存在だからね。ここのファンも素晴らしいし、来年も是非同じように頑張りたい。そして、VWのマニュファクチュアラーズタイトルを決めることができて光栄だ」(オジェ)

勝者はオジェだったが、この「ウェールズ・ラリーGB」の影の主役とも言えるのは、2位のタナクだった。来季はワークスチーム入りがほぼ確定していると言われており、いよいよRC1クラス初勝利と、その先のチャンピオン争いに名乗りを上げそうだ。

「最高に楽しめたよ。この『ウェールズ・ラリーGB』は、伝統のクラシックラリーで偉大な歴史を刻んできている。どのSSも素晴らしく挑戦的で、世界最高のコースと言ってもいい。何より、王者のオジェとずっと争えたんだからね」(タナク)

WRCラリーも、いよいよ残るは最終戦のみ。11月17日〜20日に「ラリー・オーストラリア」が開催される。場所は、東海岸の観光都市ゴールドコーストから約300キロほど南下した海岸線沿いの街・コフスハーバーを中心とした地域で行われる。

<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>

※写真はすべて©WRC/無断転載禁止です。

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