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後半戦を占う2017年シーズンの中間地点、ラリー・イタリア【世界ラリー(WRC)】

FIA世界ラリー選手権の2017年シーズン・第7戦「ラリー・イタリア」が、地中海に浮かぶイタリア第2の島・サルデーニャ島で開催される(6月8~11日)。

1月からスタートした全13戦の世界ラリー(WRC)も、ここでシーズンの折り返しを迎える。

 

◆ドライバーの技量が試される難コース

©WRC/無断転載禁止

ラリー・イタリアが開催されるサルデーニャ島。この地での開催が始まったのは2004年からだ。それまでは、フランスやモナコ国境に程近いサンレモという港町を中心とした地域で開催されていた。(※現在もヨーロッパラリー選手権は開催している)

ラリー・サンレモ時代は、グラベル(未舗装路)とターマック(舗装路)を組み合わせたラリーだったが、現在のサルデーニャ島へ移ってからはグラベルラリーとなっている

また、雨が多くない地中海性気候の地域だけあってラリー・イタリアは乾燥した地域を走行し、グラベルにも関わらず高速区間もあり、コース脇には岩などが見え隠れするなど、ドライバーにもマシンにも厳しいラリーのひとつとなっている。

©WRC/無断転載禁止

サルデーニャ島は、古くは石器時代から、その恵まれた天候と土地の肥沃さから常に穀倉地帯として重要視されてきた。

石器時代は、火山が多い地域ということで加工性に優れた黒曜石や火山ガラスなどが豊富で、豊かな暮らしが出来ていた痕跡が現在にまで残っている。その後、時代によってさまざまな人種によりサルデーニャ島は支配されてきたが、とくにローマ時代はローマ帝国の穀倉地域として大いに発展している。

 

◆激化するドライバーチャンピオンシップの行方

©WRC/無断転載禁止

そんなサルデーニャ島で開催されるラリー・イタリアだが、今回の大きな話題は、なんといってもシトロエンに新加入したドライバー、アンドレアス・ミケルセン(ノルウェー出身/27歳)の存在だろう

2013年から2016年までチャンピオンチームのVWに所属していた“VWの秘蔵っ子”とも言える存在で、王者のセバスチャン・オジェ、実力派のヤリ‐マティ・ラトバラ、そして若手のミケルセンが揃ったVWは黄金時代を作り上げていた。

2016年にVWが突然WRC撤退を発表したとき、誰もが次世代王者候補のミケルセンがどこへ移籍するのかに注目していたが、ミケルセンはVWグループ会社であるシュコダから下位カテゴリー・WRC2で参戦することを選択した。

シトロエンにしても、エースのクリス・ミークが思うような結果を残せていないことから、チーム全体を底上げするためにも、シーズン途中でのミケルセン獲得は大きな追い風になると感じているようだ。現状では今回だけのスポット参戦契約だが、シトロエンの首脳陣は残り6戦も契約できないかと調整していることを隠していないことからも、ミケルセンへの期待の大きさがわかる。

ワークスチームの一角であるシトロエンからのミケルセン参戦が決まったことで、元VWのメンバーは、フォード、トヨタ、そしてシトロエンと分散することとなり、各チームの戦力差はかなり均衡したものとなるだろう。思いがけない補強を果たしたシトロエンだけでなく、どのチームもシーズン折り返しのラリー・イタリアには並々ならぬ気合が見える。

まずはトヨタだ。

前戦ラリー・ポルトガルでは、サルモネア菌による高熱などで体調を崩し、体力的にも厳しいラリーを強いられたエース、ラトバラが完全に復調。マシン開発は順調に進んでいることから、シーズン3位に落ちたチャンピオンシップの巻き返しに力が入る。

ただし、体調面の配慮からラリー直前に行われるテストには不参加で、本国のフィンランドで調整を行っている。また、チームメートのユホ・ハンニネンは、2010年にIRC(インターコンチネンタルラリーチャレンジ)として開催したこのラリーで優勝を果たしており、これまで以上の好結果を狙っている。そして、3台目ドライバーとして若手のエサペッカ・ラッピも引き続き参戦する。

©WRC/無断転載禁止

王者オジェ(フォード)は、前戦ラリー・ポルトガル優勝で波に乗っているが、過去に3度も勝利した経験を持つラリー・イタリアには慎重な姿勢を見せている。コースとしても厳しいことや、チャンピオンシップ2位に浮上してきたヒュンダイのティエリー・ヌービルの存在は侮れないと感じていることを本番前のテストではコメントしている。

今季、チャンピオンシップ争いの中心となってきたヒュンダイのヌービルは、シーズン序盤で苦しんだが、巻き返してチャンピオンシップ獲得に向けて気合が入っている。昨年は優勝しており、ここラリー・イタリアとの相性は良い。さらに、マシンは王者オジェが気にかけるほどに速く、最後まで走り切ればしっかり結果はついてくるだろう

©WRC/無断転載禁止

そして台風の目となるのが、シトロエンの存在だ。ここからチャンピオンシップを一気に追い上げるべくミケルセンを獲得したわけだが、それは言い換えれば他のチームが食われるということ。シトロエンは、相対的にチャンピオンシップ争いに大きな影響を与える存在となった。

◇◇◇

ますます魅力が増してきた世界ラリー(WRC)。

サルデーニャ島を舞台としたグラベル(未舗装路)ラリーでは、ぜひとも各チーム同士の激しいつば迫り合いに注目してもらいたい。

<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>

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